今日は子どもの16歳の誕生日だった。
ここ2年ほど、誕生日は外食で祝っていた。
今年も「外食にする?」と訊いたところ、
しばらく逡巡したあとで返ってきたのは
思いがけない一言だった。
「あのシェフを呼んで」
半年前、両親宅の新築祝いで、
シェフを招いての食事会をしたことがあった。
その光景を、子どもはちゃんと覚えていたのだ。
放っていい世界を、先に見ていたのだと思う。
叶えられるなら、叶えてやろう。
そう思って、我が家にシェフを迎えた。

家が、お店になる時間
我が家のキッチンはアイランド型で、カウンター席になっている。
だからシェフに来てもらうと、家がそのまま小さなお店のようになる。
目の前で料理が仕上がっていくのを眺めながら食べる時間は、外食とはまた違う特別感がある。
しかも家だと、ゆっくりできる。
子どもの誕生日会に両親も招いて、一緒に食卓を囲めた。
一度で誕生日祝いと親孝行が叶う、なんとも良い会になった。
器は、お正月にしか使わない特別なものも出した。
両家から受け継いできた器たちだ。
ハレの日には、ハレの器を。
シェフに「良い器が揃っていますね」と声をかけていただいて
少し面映く、そして嬉しかった。

「あのシェフのすしは食べられる」
実は子どもは、あまりすしが好きではない。
魚は刺身で食べるのがいちばん、という子だ。
ところが今日は、シェフのすしを初めて口にした。
そして食後、こう言った。
「あのシェフのすしは食べられる😏」
何様なのか、と笑ってしまったけれど、あの子なりの最上級の賛辞なのだろう。
幼い頃から舌が肥えていて、この歳にしてすっかり味の目利きになっている。
そう育ててしまったのは、まぎれもなく私たち(含む私の両親)なのだけれど。

良い顔は、伝染する
食事のあいだ、子どもが本当に堪能している表情を
何度も見ることができた。
おいしいものを食べているとき、人は本当に良い顔をする。
そしてその顔を見ていると、こちらまで嬉しくなってくる。
作り手のシェフも、囲む家族も、みんなが少しずつ幸せになっていく。
良い顔が、食卓をぐるりと巡っていく。好循環とは、こういうことをいうのだと思う。
シェフは大阪で小料理屋を営んでいらっしゃる。
「子どもがお酒を飲める歳になったら、お店に飲みに行かせてくださいね」とお伝えしたら、「是非!」と言ってくださった。
来年の誕生日も、日を空けておいてくださるそうだ。
楽しみが、また一つ増えた。
モノより、コト
この夏は、旅には出なかった。
それでも、忘れられない一日になった。
モノより、コト。
体験にお金と時間をかけることが、こんなにも豊かな記憶を残してくれる。
改めて、本当にそうだなと思う。
放った願いが、こんな一日を連れてきてくれた。
あなたには、放ってもいいと思える場所があるだろうか。

最後までお読みくださりありがとうございます!

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